さらばハイセイコー

2006-12-15 17:00:00

社会に出て、会社に入ったとき、お酒を飲む機会が多いことに驚いた。仕事が終わると毎日のように、居酒屋に直行するのである。僕を飲みに誘うのは、上司のTさん。Tさんは酔うと必ず昔の話をする。「こんなすごい経験をしたことがある」とか、「あのときああなっていれば…」とか、そういった類の話である。僕は人の話を聞くのが好きだ。一般的には「うざい」といわれるであろう、酔ったTさんの話も苦ではなかった。ただ、Tさんとお酒を飲むと、僕は必ず悲しい気持ちになった。
 
寺山修司がこんなことを書いている。「さらばハイセイコー」という詩の一節だ。
「振り向くな、振り向くな、後ろには夢がない」。
 
僕が悲しい気持ちになったのは、要するにTさんの話に夢がなかったからだと思う。そして、意外というかなんというか、寺山修司のこの言葉を僕に教えてくれたのは、ほかでもないTさんなのである。夢がないと知りつつも、毎日お酒を飲み、過去を振り返らざるを得ないTさんの気持ちを考えると、僕は今でもやるせない気持ちになる。

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